テキトーな予断 | 丸の内で働く社長のフロク Powered by アメブロ

テキトーな予断

リノベーションという言葉は90%以上の人々が認知していて、半分以上の人々がその内容まで理解しているのだそうです。これは2012年の調査。
もし、もう少しACSが儲かっていて、潤沢な調査費用を掛けられるなら、私はまずリノベーションに関するもっとタイムリーな調査をやりたいと思っています。それくらい、鮮度の高い体系立てられた情報がないのがこの業界です。

逆に言えば、それだけ未成熟だということですから、大いにやりがいもあります。でも、最初に中古マンションのリノベーション事業をスタートした頃には、産業の未成熟性を表面的なチャンスとしてしか捉えていませんでした。つまり、「どうせテキトーな事業者しかいないのだから、自分たちが少ししっかりやれば、あっという間に大きくできる」といった傲慢な態度です。

どうせテキトーな事業者しかいないはずという実にテキトーは予断は、自分たちの行動をテキトーにしていきました。振り返ると、2010年頃、私はリノベーションに高額の予算を投じることは愚の骨頂と考えていました。

これは、根拠の薄弱な人づてに聞いた話を基にしていました。「リフォームは現状復帰レベルでいいですよ。それよりも大事なのは再販価格です。安いことが大事なんです」と私は教わり、とても合点がいったのです。
その当時見た調査資料では、消費者がリノベーションを選ぶ最大の理由が「新築と比較してリーズナブルな価格」でした。ですから、リフォームの質よりも提供価格だという話にすっかり納得したわけです。

そうしてできた商品は、後から思えばとんでもないものばかりでした。コンセントもTV端子もない部屋。しかもそこには窓も収納すらもない。凸凹のままのフロア、しかもフローリングと称して木目調のクッションフロア(カッティングシートのようなものです)を貼っているだけ……お客様がどのように暮らすかなど全く考えず、単に現状復帰だけして「暮らせない家」を次々に作ったのです。

もちろん、マンションですから躯体を変えることができません。躯体という不変要素によって、最初からできないこともあるわけです。だからこそ、お客様の暮らしを考えて、投資不適格のマンションというものが存在します。しかし、その当時はそんなチェック機能もなかった。
果ては、ペットのための洗い場にしか見えない小さな風呂場、給排気がうまくいかずキーキーと金切音を出す部屋など、およそ住宅供給者として恥としか思えない商品が生まれました。

そして、売れないと悩む。今思えば、アホか! と自分を怒鳴りつけたくなる心境ですが、ここにも業界経験者から教わったあるアドバイスが潜んでいました。