業界常識の呪縛 | 丸の内で働く社長のフロク Powered by アメブロ

業界常識の呪縛

業界の特殊性ほど当てにならないものはないと以前から思っていました。
人材サービスを手掛けている時、ありとあらゆる業界の企業と取引をしましたが、ほぼ全ての業界が自分達は特殊だと主張します。
しかし、その特殊性はいくら考えても特殊とは言えないような類のものばかりで、閉じた環境の中で生きていると自分達が特殊だと思い込んでしまうのだなと感じたものです。

おなじような事柄に、地域の特殊性があって、支店展開する時に「名古屋は難しい」やら「京都の方が難しい」やら「実は大阪が一番閉鎖的だ」などなど。
やたらと地域の特殊性を聞かされたものです。
でも、それらは煎じ詰めると「閉鎖的だ」というだけであり、なおかつ、各地域ともに他地域と比較して明確に閉鎖的だということを証明する事実が見出せたことはありません。
考えればわかることですが、東京の会社(人)が取り立てて開放的なはずもありません。ただ単に、東京は人口も多く、企業も多い。それだけマーケットが大きいので開放的に見えるだけというのが私の考えです。
つまり、どうやら、みんな自分達が特殊だと主張したいようです。

中古マンションの再販をスタートした時、いろんな特殊性について教えてもらいました。
もっとも印象深いのが、「10勝1敗ならいいだろう」とか「4勝1敗くらいはしかたない」と言った話です。
(言う方によって、勝率が違うというのも印象深い点でした)
これは何かと言うと、「10物件取り組んでいたならば、そのうち一つくらいは赤字になるものだ」という教えでした。
(くどいですが、5物件に1物件が赤字、4物件に1物件が赤字などなど、言う方によって違いはありました)

最初、そんなことを聞いてすごく違和感を感じたことを覚えています。
そして、その後、もしかしたらそれは正しいのかなとも思いました。
理由は、負ける(赤字になる)プロジェクトが発生してしまう事実と出会ったからです。

うっすらとした違和感を抱えながらも、けっこう工夫しているのに赤字物件が出てしまう事実。
事実側を信じれば10勝1敗理論は成立する。
でもなんだかおかしい気がする。
そんな状態が長く続きました。

でも、ある時、自分の工夫が足りないだけなのだという結論に達しました。
つまり、常識的に考えて4勝1敗だろうとも10勝1敗だろうとも、一つの負け(プロジェクト赤字)も許されるはずがないのです。
赤字になるものは赤字になるべくしてなっている。
「赤字になる理由は最初からあった」という事実から目を背け、赤字になってしまったと「他人のせい」みたいにしていただけだとわかりました。

すごく簡単な話なのですが、「お客様に喜んでいただける物件だな」と思えるものは赤字になることはありません。
逆にお客様に「選ばれない理由」があるものは、一直線に赤字へと向かっていきます。
(実は、これ、とても良い効果があって、中古マンション事業を継続するためには「顧客満足」を真面目に追求しないと成り立たないということなのです)
それじゃ、「選ばれない理由」ってなんだろうとなるわけですが、これが全部ミクロの積み上げです。
多くの場合、選ばれない理由は複合的に発生します。つまり、理由が一つじゃない。
こういうバラバラの要因を属人的ではなく、形式知にすることが必要になっていきました。