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時間経過の質

ワインの飲み方を論じるというのもキザなのですが、今回もそこから入りたいと思います。
ワインは必ずしも価格と美味しさが比例しません。
美味しさを決定する要素が実に多様だからというのが一つの理由と思います。
安いワインでも気の合う仲間と飲めば美味しいし、料理との相性の良さはときにお金で買うことができません。

高額なワインたちは、もはやどれだけうまいかではなくブランドによって価格が引き上げられてしまいます。
実際、うまいので文句も言えませんが、10万以上するワインはもはや価格決定のメカニズムは誰も説明できないのではないでしょうか。
ですから、一般的に手の届くワインで体験することから中古マンションに通じることを書くつもりです。

さて、話を戻します。
ある時入手した同じワインが10年後に全く別物になってしまうということが起きます。
これもまた入手価格が必ずしもうまさと比例しない例と思います。
それはなぜか?

出荷段階での問題(いわゆるブシュネと言われるコルク事故)は別として、全く同じ条件のワインが変化する理由は保管状態にあります。
良いワインを維持するためには、
・13~14度の温度を維持
・振動を与えない
・光が当たらない
といった要素が大事になります。

ですからワインセラーやワイン蔵のようなところで保管するということになるわけです。
ところが、悪条件下でほったらかされたワインはどんどん状態が悪くなります。
良い畑、良い作り手のワインを入手し、「10年後の記念日に飲もう!」と思っていても、保存状態が悪ければ、その10年間は劣化のためだけに時間経過したことになり、まったく美味しくありません。
(例えば、気温が上下する室内に放置しっぱなしなど、美味しさは期待できなくなります。逆に、早く飲んであげたほうがよかったということになるわけです)
逆に、作柄はイマイチだったり、畑はちょっと二流(?)みたいなワインでも、保存状態が良ければ、10年後に化けるということもあります。
(もしそれなりのワインを今買って、5年後、10年後に飲もうと思うなら、せめて冷蔵庫の野菜室には入れておきたいですね。できれば、もっと安定した環境に置いてあげてほしいと思います)

さて、中古マンションを手掛けていると、これが築20年なの? とか、これが30年も経過した建物か! と思えるほどピカピカに見えるマンションがあります。
その一方、まだ10年も経過していないのに、ずいぶんと陳腐化したものだなぁと感じるケースもあるのです。
また、時代は確かに感じるものの、良い年の取り方をしているなと、ちょっと人間を見るようなかたちで建物を見ることもあります。
つまり、中古マンションも時間経過のしかたがとても重要なのであって、必ずしも築年が新しければいいということではないし、同じ年代でも時間の過ごし方で全く別物になるということです。

マンションの保全は日常的な管理状態と定期的に実施される修繕によるものが基本でしょう。
やはり、管理が行き届き、植栽一つとっても木々が豊かに育っているマンションは素晴らしいなと思います。
定期的に修繕が行われ、共用部分が更新されていれば、古さはあまり感じません。

加えて重要だなと思うのは、私がこの場で何度か書いたことですが、そのコミュニティの質だと思います。
マンションの住民たちが少しでも気持ち良く長く大切に住みたいと考えているなら、おのずと良いコミュニティ=良いマンションができていく。
たとえば、気持ち良く住むことを考えていない住民たちの場合、せっかくのポーチスペースにタイヤを放置してみたり、他人には理解されない芸術品(?)が放置されていたり……
本来、共用部としてルールに基づいて活用しなければならない場所を自由勝手に使っているマンションは、やはり陳腐化が早いなと感じます。

私なりにコミュニティの質を確かめる一つの方法があります。
それは、マンション住民への挨拶です。
「こんにちは」「おはようございます」と元気に挨拶をしてみる。
で、常に明るく返答が返ってくるマンションはだいたいいいマンションです。
逆に、挨拶すれどもすれども、まったく反応がないケースもあるし、明らかに戸惑っているのがわかることもあります。
ああ、このコミュニティは相互に通じ合う関係がないし、周囲に関心がないのだなと感じます。
つまり、住んでいる場所への愛着が薄いのだろうと思うのです。

もし、新たな住まいをお探しなら、そこで「あいさつ」をしてみることをオススメします。