備えることが苦手な人類の本質 | 丸の内で働く社長のフロク Powered by アメブロ

備えることが苦手な人類の本質

世間の話に疎い私ですが、口永良部島での火山噴火についてはわかっています。
ここのところ、随分と自然災害というんでしょうか、噴火だとか地震だとかが増えています。
お互い気をつけなくてはと思う次第です。
(つい先ほども、小笠原近辺を震源とするM8.5の地震が発生しました)

ヒューリスティックという言葉があります。
人間は「先行きを見通す力がない」。逆に言えば、人は目先のことに対して素早く答えを「出してしまう」能力があるということと理解しています。

後先を考えないという言い方をしますが、これは人間の本性が元来後先を考えられないために、それを諌めることを目的に生み出されたに違いありません。
なにが言いたいかというと、今回の口永良部島での島民の方々のように日々起きるかもしれない事態に備えられているのはマイナーなのであって、一般的には、ほとんど誰も先行きへの備えをできていないだろうということです。

経営という仕事は、この人間が持ってしまっているヒューリスティックにどれだけ抗えるかということだと思います。
先を見通す力など、人類にはそもそも備わってはいない。
むしろ、目先のことに素早く反応するための機能が人間の脳には濃厚にインプットされています。
(これがヒューリスティックだと理解)
となると、そもそも中期計画を立てるなどということは至難の技であり、また、目先のことに素早く反応せず、よく考えてから答えるなど困難極まりないわけです。

逆のことをメンバーに対して指示することもよくあります。
今やれ、すぐやれ、早くやれ、というのは経営が発するごく日常的な要求です。
(よく考えてからやれ、ゆっくりやれ、じっくりやれなどという指示ができる経営者は超人的能力者であるか、まったく業績に関心がないかのどちらかに違いありません)
しかし、今すぐ早く実行できることは、いうまでもなく、全てが今すぐ早くやるべきことであって、それ以外の全てはじっくり考えてから答えを出すべきことばかりではないでしょうか。

つい先日もさしたる考察もなく、メールで提案された企画にゴーサインを出していました。
しかし、この時も、脳みその奥側から「おかしいぞ」という声が聞こえていたのです。
ところが、持ち前のヒューリスティックが機能して、その「おかしいぞ」という声を打ち消して「いいんじゃない」的ないい加減な承認を導き出しました。

そんな反応的な判断を覆す「おかしいぞ」という脳の奥からの警告にどれだけ耳を傾けることができるか。
それが経営に求められる重要な要素の一つだろうと思います。
ヒューリスティックに負けず、めんどうな再考を自分自身に求める。
経営というのは実にめんどうな仕事です。