カレーライスで経営を思ふ | 丸の内で働く社長のフロク Powered by アメブロ

カレーライスで経営を思ふ

カレーライスを食べました。正確には「印度風カリーライス」。日本橋室町の元三井信託銀行さんの本店のはす向かい。古めかしい佇まい。真偽は定かではないが、カレーライス発祥の店とか…。この店、4年ほど前にⅠ社の社員と行ったのが初めて。以来、室町で昼時を迎える際にはこのカレー屋に入ります。
この店の経営はすごい。ブログ諸君の中にも行ったことのある人がいると思いますが、実に「顧客教育」が出来上がっているのです。入ると、注文する自由は与えられません。なぜか?それは、メニューがカレーライスしかないから。(大盛りを注文すると、2杯注文せよといわれるらしい。)ですから、入ったらとにかく着座して黙っているしかない。究極にカレーに集中するこの店は顧客に対してもカレーに集中することを強制します。従って、店内は昼時のビジネス街とは思えないほどの静寂が広がっているのです。顧客が入ってくる度に、「はい、一個!」と注文を通す声が響き渡ります。顧客はその店に入った瞬間にカレーライス一杯を注文したものとみなされる。究極のオーダーシステム。これだけサービスにうるさい世の中であるにもかかわらず、誰一人として文句は言いません。この店の伝統でしょうか、脈々と作り上げられた暗黙の了解事項に顧客は完全に従う。すごい経営だ。

それだけではない。この店の名は未詳。名前が見当たらないのです。店の看板には”印度風カリーライス”と、なぜか”珈琲”とだけ掲げられている。しかも、看板のサイズや位置からすると”珈琲”のほうが目立つ。(どうやら、昼時以外はコーヒーを出すようです。しかし、何時からコーヒーが出されるのかは表示がありません。)この店が何であるのかを顧客に視認させ誘導するという商売上の基本を完全に無視し、カリー、珈琲といった一般名詞だけを並べる。これだけ、ブランドの重要性が叫ばれる現代、企業は自らのブランディングに血道を上げているというのに…。この店は自らを記号化することを完全に放棄し、しかも、出しもしない「珈琲」という赤い看板を堂々と掲げる。凄まじい逆張りです。

以前、ある経営者の方にお聞きした話を思い出します。あらゆる「種」が生き残るために必死に進化し続けた。しかし、大半の「種」は進化しても適応しきれず淘汰されていった。ところが、「カメ」だけは頑なに進化を拒み続けた。進化しないという選択によって今も生き続ける唯一の「種」だそうです。この室町のカレーライスはまさにカメだ。印度風カリーライスだけを頑なに提供し続け、一切時代に流されず生き続けている。カリーライスというよりカメーライスだ。だから食べるときは、よく噛め!なんちって…

 

ブログ諸君のご支持に感謝!なぜ反省か?やがて皆さんにも披瀝できる時がくるでしょう。その日までこのフロクが存在すればですが…。