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通達

ブラック企業の話が思いがけない反応を得ております。そんな中、ブラック呼ばわりで悩む企業の人事担当役員が管理職に宛てた社内メールを入手したのでご紹介したいと思います。
(※社名部分は○○○と置き換えています)


===以下抜粋===

過日より全社管理職会議などで議案に上がっております「当社に対するブラック企業なる極めて不名誉な中傷」について大変残念な報告がございます。当社システム部が鋭意取り組んできたヤフー社、グーグル社など検索サイトへの働きかけは本日現在捗々しい成果を上げておりません。「○○○ ブラック」「○○○ ブラック企業」など、勝手に出てくる機能(サジェスト機能と説明を受けております)の削除を求めてきましたが、ヤ社、グ社らは公共性などを盾に一切対応しない姿勢を崩しておりません。

一方、先月の優績者懇親会の場において複数の社員から「友人に勤め先を言いたくない」「言ったら『いつ辞めるの?』と聞かれる」「お前の会社って×××(この場で書くことすら憚られる中傷)だってネットに書いてあるよ」など、日々堪え難い思いをしているとの切実な声が上がりました。皆さんもご存知の通り、オーナーはこの懇親会を大変楽しみにされており、四半期に一度じゃ足りんとのご判断で今期から月1回に増やした経緯があります。

社内報用のツーショット写真を一人一人と丁寧に撮影し、がっちりと握手をされるという恒例行事までは上機嫌でいらしたオーナーがブラック企業の話題が始まるとともにご気分を害されたことは言うまでもありません。オーナーの前でブラック企業の話題は「厳禁」と通達しましたのは前期末でありますが、未だにこれが徹底されていない事実に人事・組織を預かる立場として心痛を覚えます。
本来であれば、ブラック企業を話題に出した社員並びにその管理者を厳罰に処すところでありますが、優績者懇親会という場の性格上今回は不問と致します。

さて、このようないきさつから我が社のブラック企業問題に対して、オーナー自ら強い課題認識をお持ちになられ、今回経営会議にて重点的に協議された次第です。冒頭、オーナーから「だいたいウチは残業代だって、人件費だって毎年上がっていってるじゃないかっ!」と至極ごもっともなお話をされました。事実、前期につきましても人件費は対前年15%上昇しております。
これに対して経理部長より「まあ、店舗と従業員数が増えてますので、それに比例しているだけですけどね」などと当事者意識を欠いた発言があり、これを受けまして、経理部長は経理課課長代理に降格となったことを申し添えます。

最大の収穫はたまたま臨席したシステム部山田部員からの提案であります。
「いっそのことホワイト企業を名乗ったらどうですか?」という一瞬退職勧奨がチラつく発言からスタートいたしましたが、そこはさすが本質を見抜くオーナーだけに顔色一つ変えずに当社の若き技術社員の意見に耳を傾けられました。
「検索サイトのサジェスト機能はユーザーが頻繁に検索したワードを引っ張っているだけですから、たとえば当社がホワイト企業として何度も検索されていれば、ホワイト企業というサジェストが上がってくることになるんすよ。だから、色んな人にウチの会社はホワイト企業だって書きこんでもらって、それと同時に『○○○ ホワイト企業』って検索掛ける人が大勢いたら、いつかウチの会社はホワイト企業ってことになるんすよ」
この奇抜としか言いようのない意見に対して、オーナーはしばらく沈思黙考され……
「ゴールド企業で行け」との見事な決断をされたのです。ブラックに対しホワイトではいささか真正面過ぎることは言うまでもありません。確かにゴールドとなれば輝かしいことこの上もなく、オリンピック招致で盛り上がる国内を考えればなおのこと相応しいとなり、全会一致にて「ゴールド企業」となることが決議された次第です。

具体的には、当社2500名を超える従業員が力を合わせ、毎日グーグル、ヤフーなどで「○○○ ゴールド企業」と検索をすることと致します。管理職の皆様におかれましては、日次管理においてしっかりと検索実行しているか否かを怠りなく確認頂くようお願いいたします。
これと同時並行にて、当社関与先(仕入先・そのまた仕入先などなど)に対して「○○○ってゴールド企業だよね」といった書き込みをブログ・フェイスブック・ツイッターなどに積極展開するよう要請済みであります。また、当社にとって憎むべき2チャンにおいても「【ゴールド企業】○○ってすごいよね」などのスレ(スレッドの略)が立っていることを併せてご報告いたします。
本件につきオーナーより以下のようなメッセージを授かっております。
「ゴールド企業として我が社は新たな成長段階に突入する。もうブラックなどとは言わせない。その決意を胸に全社一丸となって輝いていこう」
個人的にはこの貴重なお言葉はおそらく生涯忘れることはなかろうと考えております。ブラックなどと呼ぶ世間を見返すべく日本最初のゴールド企業として胸を張ってまいりましょう。
以上



言うまでもなく作り話なので、これってどこの会社ですかとか聞かないでください。