異臭 | 丸の内で働く社長のフロク Powered by アメブロ

異臭

(内容が気持ち悪いので読まないほうがいいかもしれません)

一人異臭騒ぎである。
つまり、誰も騒いでいないのに、一人だけ異臭がすると騒いでいるというわけだ。
私の嗅覚はそこまで敏感ではない。
ところが、今週立て続けに異臭問題が発生した。
(これを個人的には異臭イシューと呼んでいる)


最初に感じた異臭は異臭というよりも悪臭だった。
夏場だけに仕方ないだろうが、狭い会議室の場合、どうしても換気が悪くなる。

その場は「若い男子がいるから部室っぽいのは仕方ない」とうことですませた。
犯人にされた男子はたまったものではなかろうが、まあ、その程度で終わったわけだ。


ところが、間もなく本当に堪え難い臭気に襲われた。
それはMくんが運転する社用車(作業車)で起きた。
ある場所まで便乗を決め込んだ私が助手席のドアを開ける。
マックス状態のエアコンが、うなりを上げ勢いよく冷気を吹き出していた。
乗り込みぎわ前屈みになった私の鼻腔に、その人工風が直接ぶち当たった。


この瞬間、堪え難い異臭が鼻腔内に広がった。
臭気について言葉で表現するというのはなかなか難易度が高い。
難易度は高いがこれも訓練だと思って綴ろう。

まず、はじめに鼻が受け止めるには明らかに大きい粒子が鼻腔の奥ではじけた。
はじけた直後、ツンと頭の奥にまで突き上げる刺激があり、刹那軽いめまいを覚える。
それから芋焼酎を極限まで蒸留してムンムンさせたような強烈な臭気が鼻腔内に充満した。
臭いは静かに腔内に沈殿していく。古い醤油を凝縮した重い香り。そこに、シンナーのような化学材料を混ぜたような匂いが加わった。

化学臭と芋焼酎をムンムンさせた臭いの由来は同じかもしれない。
ワインで言えば、一次アタックと二次アタックの原因物質が同じというケースだろう。
分析するに、古い醤油の臭いに頭がガンガンする化学臭を混ぜたような臭いということになる。


すぐにエアコンの吹き出し口を閉じ、車が動き出すと同時に窓を全開にした。
鼻を塞ぐ手を緩めず、運転するMに考えられる原因を尋ねる。
尋常ではない異臭だというのに、なんとMは半笑いである。

「昼に食べたラーメンのせいですかね?」
Mは薄笑いを浮かべたまま答える。
しかも、的外れとしか思えない回答だ。
この男が食べたラーメンの臭いが、車のエアコンから、こんなに勢いよく吹き出すわけがない。

「ニンニク入れたんで」
就業中だというのに生ニンニクをラーメンに入れて美味しく食べたことを臆面もなく告白するM。
しかし、ニンニクくらいでこれだけの異臭が生まれるわけがない。


言うまでもなく、異常であるか正常であるかは相対的に判断される。
どうやら、この異臭は私にだけ感じられるものなのだ。
つまり、異常なのは臭いではなく私かもしれないわけだ。


この事態を共有した身近なスタッフがポツリ。
「脳梗塞で倒れた祖父が同じようなこと言ってたんですよねぇ」


異臭イシューなどとふざけている場合ではない。
病院、行こうかな……
人知れず弱気になる週末である。