ミクロクリマ | 丸の内で働く社長のフロク Powered by アメブロ

ミクロクリマ

ミクロクリマという言葉があります。
英語で言えばmicro climate。
ワインの世界では、気候条件のわずかな違いによってぶどうの作柄が著しく異なり、それが最終的なワインの品質を決定付けます。

たとえば、世界的な代表産地コート・ドール。
その26村々を南北に貫く国道974号線の西側にはまるで連なるように銘醸地が並んでいるのに、東側にはほとんど村名を名乗ることができる畑は存在しません。
つまり、道路一つ隔てただけで、そこから生み出されるワインの価値がまるっきり違うのです。

中古マンションの仕事をしていて、毎度のごとく、このミクロクリマのことを思い出します。
通り一つ隔てただけで価値がまるで違う。
そんなことが日常的に起こります。

すぐにわかることで言えば、やはり幹線道路に面したマンションは良い投資になる確率はとても低いと言えます。
いくら、その幹線道路のすぐ裏手が、優れた住宅地であったとしてもです。
あるいは、アドレス(地名)の違いもケアーすべきポイントです。
いくら同じ駅で、同じ徒歩分数であったとしても、差が歴然とすることもままあります。

それが有名な(誰でも知っているような)駅や地域で起きるならば、まだ私たちも納得がいきます。
ましてや、その違いが地域において公知となっていて、駅の南側と北側では価値が違うとはっきり言われているならば、まだ知りようというものもあります。
ところが、地元の方でもアドレスによる価値の違いを明確に把握していないということが実に多くあります。

考えてみれば、そこまで奥深く自分たちが住んでいるエリアの価値について比較するわけもありません。
だから、結局、それを自分たちで発見するしかないわけです。
ここでも、またデータ収集とその分析しか、確たる検証方法がないという結論になります。

徹底して疑いの眼で、よくよくデータを比較し合いながら見ていけば、違いには気付きます。
しかし、少しでも手を抜けば、違いを発見できず、大きな痛手となって自分たちに帰ってくるというわけです。
これは、お客様への提供価値に影響を与える要素でもあります。
つまり、駅の北側と南側で価格に差が生じている場合、安い南側を敢えて選ぶということもお客様の選択にはあり得ます。
もちろん、価格の高い北側であったとしても、そこに住むだけの価値を感じていれば、それを選択するお客様がいておかしくはありません。

供給者としての自分たちがお客様が感じるであろう価値を無視し、外形的な要素だけを並べて価値判断した時に、とんでもない問題が生じてしまいます。
となると、お客様と同じレベルでエリアを知り、そのエリアを愛す必要が出てきます。
さらに言うと、「よく知り愛す」ためにはそう多くの地域を対象とすることはできなくなるわけです。
ACSが投資している物件群を見ていただければ、お分かりいただけますが、そのエリアは相当集中しています。

納得いく商品を納得する形でお客様に届けるためには、浮気性ではやっていけないという結論になりました。
これも失敗体験からの結論だったわけですが……。
そんなことでACSでは知らない地域への投資を「落下傘降下」と呼び、まったく好んでいません。